自賠責保険について教えてください。

1.強制加入の自賠責保険
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、交通事故により他人を死傷させた場合に補償を行う被害者の保護のための保険で、法律で強制的に加入が義務づけられています。自動車教習所でお聞きになられた方も多いと思いますが、車検を受ける際に、車検の有効期間に対応した自賠責保険を更新し、保険料を支払いますので、普段は加入しているという意識は低いかもしれません。
自動車損害賠償保障法第3条(強制加入)
第3条 何人も、自動車若しくは原動機付自転車(以下「自動車等」という。)を運行の用に供するには、当該自動車等についてこの法律の定めるところによる自動車損害賠償責任保険契約(以下「自賠責保険契約」という。)を締結しなければならない。

2.補償範囲と支払限度額
自賠責保険は、あくまで最低限度の保証をする制度ですので、上限金額が決められています。
自賠責保険の保険金は「傷害による損害」「後遺障害による損害」「死亡による損害」の区分で構成され、各限度額は被害者1名につき次のとおりです。
| 保険金区分 | 支払対象 | 限度額 |
|---|---|---|
| 「傷害による損害」の保険金 | 治療費・通院交通費・休業損害・傷害慰謝料等 | 120万円 |
| 「後遺障害による損害」の保険金 | 後遺障害逸失利益・後遺障害慰謝料 | 第1級~第14級:75万円~4,000万円 |
| 「死亡による損害」の保険金 | 葬儀費・逸失利益・死亡本人の慰謝料及び遺族の慰謝料 | 3,000万円(葬儀費用50万円含む) |
3.傷害による損害の内訳
傷害保険金(上限120万円)には次の各費目が含まれます。各項目の計算方法は、代表的な部分のみを記載しています。
- 治療費:実際にかかった医療費
- 通院交通費:公共交通機関や自家用車(1km15円)の交通費
- 傷害慰謝料:日額4,300円×「治療期間」と「実通院日数×2」のいずれか少ない方の日数
- 休業損害:日額6,100円が原則だが、立証すれば日額19,000円を上限。家事従事者も含む。
- 看護料(付き添い費):12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合に入院日額4,200円、通院日額2,100円等
- 診断書料:自賠責書式の診断書・診療報酬明細書等の発行手数料等
4.後遺障害保険金の等級別支払額
後遺障害等級認定(1級~14級)に応じ、以下の保険金額を限度額として支払われます。
自動車損害賠償保障法施行令 別表第1
| 等級 | 保険金額(単位:万円) |
| 第1級 | 4,000 |
| 第2級 | 3,000 |
自動車損害賠償保障法施行令 別表第2
| 等級 | 保険金額(単位:万円) | 等級 | 保険金額(単位:万円) |
| 第1級 | 3,000 | 第8級 | 819 |
| 第2級 | 2,590 | 第9級 | 616 |
| 第3級 | 2,219 | 第10級 | 461 |
| 第4級 | 1,889 | 第11級 | 331 |
| 第5級 | 1,574 | 第12級 | 224 |
| 第6級 | 1,296 | 第13級 | 139 |
| 第7級 | 1,051 | 第14級 | 75 |
5.加害者の任意保険会社が対応する事案では、自賠責保険に直接請求せずに、賠償を受けることが可能です。
交通事故の加害者が対人賠償保険に加入している場合には、自賠責保険に直接請求せずに賠償を受けることが可能です。
「一括対応」と呼ばれており、加害者側の任意保険会社が治療費の立て替え払いをし、自賠責書式の診断書・診療報酬明細書等を随時取得します。
取得のために、被害者は、加害者の任意保険会社に「医療照会同意書」の提出をします。
「一括対応」では、加害者側の任意保険会社が加害者の自賠責保険会社に、支払限度額の範囲で求償しますので、被害者が直接加害者の自賠責保険会社に請求する必要がないということになります。
事故直後の治療費立替えや、書類準備、複数の保険会社への請求窓口の管理といった心理的・事務的負担を、加害者の任意保険会社が代行するため、被害者は治療に専念できます。
半田知多総合法律事務所でも、後遺障害の被害者請求(16条請求)は自賠責保険会社に対して直接行っていますが、加害者が任意保険会社に加入している場合には、「一括対応」を利用しています。


