交通事故の後遺障害とは

後遺障害とは、交通事故による傷害が治療を続けても症状の改善が見込めなくなった状態(症状固定)を迎えた後も、身体に残存する障害のことです。

法律上の根拠としては、自動車損害賠償保障法(自賠法)および同法施行令があげられます。自賠法施行令の別表第1および別表第2において、障害の部位や程度に応じて第1級から第14級までの等級が定められています。

後遺障害の有無は、最終的には裁判で決着されるものですが、裁判所が自賠責の結論を尊重する傾向にあるので、自賠責調査事務所の判断が極めて重要とされています。

損害費目1:逸失利益とは(基礎収入・労働能力喪失率・喪失期間)

逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下した結果、将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入を指します。基本的な計算式は以下のとおりです。

「基礎収入額 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

基礎収入額について

原則として事故前年度の現実の収入を基礎収入として算出します。給与所得者であれば、事故前年の源泉徴収票の総支給額ということになります。ただし、若年労働者や学生などの場合は、賃金センサス(平均賃金)を用いることがあります。

専業主婦やの場合には、厚生労働省「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」の女性・全年齢・学歴計の平均賃金(4,194,400円・令和7年3月発表の「令和6年賃金センサス」最新データ)を採用することが一般的です。

労働能力喪失率について

労働能力喪失率とは、後遺障害によって「働く能力がどの程度失われたか」を示す割合です。自賠責保険金を決める自賠法基準では、以下のとおりとされています。

裁判実務でもこの割合を基本として、算定されています。

等級労働能力喪失率等級労働能力喪失率
第1級100%第8級45%
第2級100%第9級35%
第3級100%第10級27%
第4級92%第11級20%
第5級79%第12級14%
第6級67%第13級9%
第7級56%第14級5%

労働能力喪失期間について

労働能力が失われる期間(補償の対象となる期間)は、以下のように算定されるのが原則です。

  • 始期と終期:原則として症状固定日から67歳までとされます。未就労者(子どもや学生など)の場合は、原則18歳、大学卒業を前提とする場合は大学卒業時が始期となります。
  • 例外(高齢者の場合):症状固定時に67歳を超えていたり、症状固定時から67歳までの年齢が平均余命の2分の1を下回る場合は、簡易生命表に基づく平均余命の2分の1の期間が労働能力喪失期間とされることがあります。ただし、症状固定時の年齢によっては、基礎収入を修正するケースも多いです。
  • 例外(むち打ち症等の場合):むち打ち症の場合、一生にわたって症状が続くとはみなされにくいため、12級で10年程度、14級で5年程度に期間が制限される例が多く見られます。

損害費目2: 後遺障害慰謝料とは

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償です。裁判等で目安とされる被害者本人の後遺症慰謝料の基準額は、認定された等級に応じて以下のようになっています。

等級慰謝料の基準額等級慰謝料の基準額
第1級2800万円第8級830万円
第2級2370万円第9級690万円
第3級1990万円第10級550万円
第4級1670万円第11級420万円
第5級1400万円第12級290万円
第6級1180万円第13級180万円
第7級1000万円第14級110万円

※第1級および第2級などの重度の後遺障害の場合には、被害者本人だけでなく、近親者にも別途で慰謝料(近親者慰謝料)の請求権が認められることがあります。

後遺障害申請のために必要な手続きや資料

後遺障害の損害賠償を適切に請求するためには、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。弊所では、自賠責保険に対する被害者請求により行っています。そのための主な必要な資料は以下のとおりです。

  • 後遺障害診断書:医師から現在の症状や障害の程度が記載された後遺障害診断書を作成してもらいます。自賠責保険では、専用書式が用意されています。
  • 検査結果(画像):治療期間中の検査画像の記録の提出が求められます。レントゲン、MRI等の検査記録を医療機関でCDに入れてもらい、提出します。。
  • 診断書・診療報酬明細書:受傷から治療の経過を記録した診断書・診療報酬明細書を提出します。自賠責保険では、専用書式が用意されています。
  • その他の資料:交通事故証明書、源泉徴収票などが必要となります。