対人、対物、人身傷害、車両保険をついて教えてください

自動車保険の基本の4つの保険

交通事故が発生した際、被害回復において重要な役割を果たすのが自動車保険です。
その内容は多岐にわたりますが、ここでは最も多く登場する「対人賠償保険」「対物賠償保険」「人身傷害補償保険」「車両保険」の4つを取り上げ、それぞれの特徴について解説します。

保険の種類人身・物損の区別他人に損害を与えた場合自分が損害を受けた場合
対人賠償保険人身×
対物賠償保険物損×
人身傷害補償保険人身×
車両保険物損×

1. 対人賠償保険:他人の生命・身体への損害を補償

交通事故により他人を死亡させ、または傷害を負わせた場合、加害者には損害賠償責任が生じます。対人賠償保険は、これに備えるための任意保険であり、自賠責保険(強制保険)で補いきれない部分を補償します。

自賠責保険には上限があり、傷害(治療中部分)が120万円、後遺障害が4000万円(別表1「第1級」の場合)、死亡の場合が3000万円が上限です。
しかし、自賠責の基準の慰謝料や休業損害の補償額は裁判基準に至らないですし、重大な後遺障害を伴う事案では、損害賠償額が1億円を超えることもありえます。そこで、対人賠償保険の補償が重要となります。

自動車保険に加入している場合、ほとんどの方は、無制限の対人賠償保険に加入しています。交通事故被害に遭った場合には、相手方の対人賠償保険との間で、人身損害の交渉をすることになります。

2. 対物賠償保険:他人の財物に対する損害を補償

事故によって、他人の車両や第三者の物(例えば、ガードレール、塀、建物など)を破損させた際の損害を補償するのが対物賠償保険です。
費目としては、修理費、代車費用、ロードサービス費用等が挙げられます。

仮に、高級外車との事故、バス等の業務用車両との事故などの場合には、対物賠償金は非常に高額になることがあります。そのため、自動車保険に加入している場合、ほとんどの方は、無制限の対物賠償保険に加入しています。交通事故被害に遭った場合には、相手方の対物賠償保険との間で、物損の交渉をすることになります。

3. 人身傷害補償保険:自身および同乗者への補償

自動車事故の当事者が被害者であっても、相手方との過失割合が問題となることがあり、十分な賠償を受けられない場合があります。人身傷害補償保険は、過失割合にかかわらず、自分や同乗者が受けた人身損害(治療費、休業損害、慰謝料等)を補償する保険です。

特に、相手が任意保険に未加入である場合や、当方に過失が大きい場合において、利用することがあります。10:0の被害事故の場合には、人身傷害保険の基準が加害者の保険会社に対して請求可能な金額を上回らないので、使用する必要はありません。

対象範囲は、保険契約ごとに細かく設定されており、契約している自動車の搭乗に限定する契約、歩行中や契約とは別の自動車の搭乗中の事故でも適用される契約等たくさんの種類があります。上限金額も契約の内容によって違いがありますが、3000万円から5000万円の方が多い印象です。

4. 車両保険:自己の車両損害を補償

車両保険は、自身の車に生じた損害(他社との事故、自損事故を問わない)を補償する任意保険です。

補償範囲は個別の保険契約によりことなりますが、「一般条件型」と「エコノミー型」を設定している保険会社が多いです。前者は幅広い事故を補償し、後者は対車両事故や特定の災害・盗難等に限定した契約です。

交通事故では、相手が任意保険に未加入である場合や、当方に過失が大きい場合において、活用されることが多いです。

5. 等級制度と事故後の保険料への影響

自動車保険の等級制度の概要

自動車保険には「等級制度」が設けられており、保険契約者の事故歴に応じて保険料が上下します。等級は1等級から20等級まであり、高い等級ほど保険料の割引率が大きくなります。

  • 無事故で1年経過 → 翌年は1等級アップ(割引率上昇)
  • 一定の事故により保険を使用 → 翌年は3等級ダウン(割引率低下)

事故によって等級が下がった場合、さらに「事故有係数適用期間」が設定され、最大3年間、割引率が抑制されます。

保険使用による等級の変動

交通事故が発生しただけで、保険等級に変動があるわけではありません。

「対人賠償保険」「対物賠償保険」「車両保険」を利用した場合には、3等級ダウンする保険の契約が多いですが、事故被害に遭った場合には、自分の加入している自動車保険の内容をご確認ください。特に法人契約などでは、内容が異なることがあります。

物損事故で、数万円程度の修理費であれば、「車両保険」を使用するよりも、自費での対応の方が合理的である場合が多いです。一方で、他人をけがをさせてしまった場合には、「対人賠償保険」「対物賠償保険」「車両保険」等を利用した方が合理的なことが多いです。

実際に、保険会社に尋ねれば、3年間の保険料の増加金額をシミュレーションして、回答してくれます。