主婦(家事労働者)の休業損害について解説

1. 主婦(家事労働者)の休業損害とは

交通事故による負傷で家事(料理、洗濯、掃除、育児など)ができなくなった場合、家族のために家事労働に従事している主婦は「休業損害」を請求することができます。保険実務上も、裁判例上も認められていますが、一般の示談で見落とされがちな項目でもあります。


2. 専業主婦の休業損害の算定方法

専業主婦の休業損害の算定においては、以下の計算を行います。

  • 基礎収入:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」の女性・全年齢・学歴計の平均賃金(日額11,492円・令和7年3月発表の「令和6年賃金センサス」最新データ)を採用します。
  • 休業日数:家事が制限された日数をもとに算定しますが、様々な計算方式があります。裁判では原則として「家事労働が十分にできなかった期間」を対象にします。入院期間、安静期間等家事従事が全く不能である場合以外では、割合による認定がされることが多いです。
  • 計算式 :休業損害 = 基礎収入 × 休業日数

【参考】厚生労働省「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」

交通事故の主婦休業損害で実務上使用されている「第1巻第1表、産業計、企業規模計、学歴計、情勢労働者の平均賃金の賃金額」を日額換算すると、下記のとおりとなります。

年度きまって支給する現金給与額(円)年間賞与その他特別給与額(円)年額合計(円)日額(円)
令和4年276,300627,9003,943,50010,804
令和5年280,700628,1003,996,50010,949
令和6年293,900667,6004,194,40011,492

※年額合計=「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」=年額合計÷365日で算出。 ※出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査


【補足】主婦休業損害の主な計算方法

主婦休業損害の算定は、事案やけがの程度、証拠資料の内容によって、いくつかの方法が実務で用いられています。1~3の計算方式はいずれも一長一短であり、半田知多総合法律事務所では複数計算方法のうち有利でかつ実態に即した説得的な計算方法を相手方保険会社に提示しています。

1. 通院日ベースでの算定

通院した日数のみを休業日数とし、その日に家事をすることができなかったとして算定する方式です。自賠責の基準では日額6,100円で計算しますがされますが、上記賃金センサスによる日額で計算するという方式です。

:日額11,492円×実通院日数30日=344,760円

2. 通院期間の一定割合を家事ができなかった期間として算定

家事労働は毎日存在することに着目して、通院期間の日数の一定割合を家事をすることができなかった期間(例えば、20%程度)として計算する方式です。この方式でも上記賃金センサスによる日額を基礎収入で計算します。

:日額11,492円×通院期間100日×20%=229,840円

3. 家事ができなかった期間を逓減させる算定

家事労働は毎日存在することに着目して、入院期間や安静期間は100%、その後の療養期間は制約の程度に応じて算定する方法です。例えば、最初の1か月は50%、2か月目は30%、3か月目は20%と等、事案に即して決めることになります。診断書や日常生活状況をもとに割合を決定しますが、家事労働に対する制約は人それぞれであるため、事案によって割合が大きく異なります。
この方式でも上記賃金センサスによる日額を基礎収入で計算します。

:日額11,492円×(30日×50%+30日×30%+30日×20%)=344,760円


3. 自賠責基準による主婦の休業損害

自賠責保険の基準では、主婦休損も補償対象ですが、1日あたりの休業損害額が裁判基準と異なりますし、通院実日数に応じた計算となるのが原則です。

  • 1日あたりの休業損害額(2024年時点):6,100円
  • 原則として「入院・通院日数=休業日数」として計算されます。

4. 兼業主婦(パート・正社員等)の休業損害

パートタイマー、内職等の兼業主婦について

パートタイマー、内職等の兼業主婦については、「現実の収入」または「女性平均賃金額(賃金センサス)」のいずれか高い方を基礎収入として、休業損害を請求することになります。結果的に、「女性平均賃金額(賃金センサス)」が基礎収入として採用されるということになります。

そして、パートタイマー、内職等に減収があったとしても、原則として、現実の減収と家事労働部分を重複して請求することはできないとされています。家事労働に向ける労働力の一部をパートタイマー等の労働に向けていると考えられるからです。

正社員・フルタイムの兼業主婦について

 正社員・フルタイムで稼働している兼業主婦については、保険会社は家事労働による損害を否認することが多いです。訴訟では、より実態が審理されますので、認められている事例があります。


5. よくあるご質問

パートに出ていても主婦休業損害を請求できますか。

パート収入が賃金センサス未満であれば、賃金センサス基準での請求が可能です。

専業主夫の男性による家事労働も損害として請求できますか。

専業主夫の男性による家事労働も損害として認められます。女性に比べて説明を求められる傾向があるため、主夫となった経緯や家事労働としての実態を証明することになります。

高齢者の場合にも家事労働も損害として請求できますか。

高齢者の場合にも家事労働が損害として認められますが、賃金センサスの年齢別の項目(65~69歳、70歳~)を使用するとして、減額がされる傾向にあります。
また、同居家族と家事労働を共同して行っている場合には、別途考慮される場合があります。